国土交通省 都市局 都市計画課
市町村のコンパクトシティの形成に向けた取組を推進するため、平成26年8月に改正都市再生特別措置法の施行、及び立地適正化計画制度が創設され、既に約100都市が立地適正化計画を公表している。本稿は、立地適正化計画制度創設の経緯や作成状況について紹介するとともに、計画を策定または検討を進めている各市町村の方々と意見交換を行ってきた中で浮かび上がってきた計画作成に当たっての留意点や支援に関する取組について紹介する。
【キーワード】コンパクトシティ、立地適正化計画
【Key Word】Compact City, Siting Optimization Plan
首都大学東京 都市環境科学研究科 都市システム科学域 教授 饗庭 伸
コンパクトシティの実現を目指すため、近年に多くの計画制度が創設された。その中心的な制度と目される立地適正化計画を自治体主導でやや規律的な「コンパクトシティ」の実現を目指す計画制度としてではなく、都市空間への投資を自治体も民間もコンパクトなエリアに集中させるためのダイナミックな計画制度としてとらえ、そのための方法を論じ、具体的な方法を解説した。
【キーワード】人口減少社会、コンパクトシティ
【Key Word】population reduction society, compact city policy
東京工業大学 環境・社会理工学院 教授 中井 検裕
本稿は、立地適正化計画の課題として都市のコンパクト化に伴う土地利用の空白化への対応が十分でないことを指摘し、このことに向けた議論の第一歩として国土審議会土地政策分科会の報告書を取り上げ、そこでの議論をもとに、土地を切り捨てないコンパクト化のあり方を論じたものである。まず、都市内の緑地、農地についてその保全が重要であることを指摘した上で、空き地・空き家の創造的活用として隣地の買い増しについて議論している。さらに、コンパクト化によって広く豊かな土地利用を実現するためには、区画を拡大させながら空き地・空き家を集約する事業的手法が必要であるとし、土地区画整理事業の可能性を特に事業費の点から検討している。そして、広く豊かな土地利用の実現における公共団体の役割の拡大を提言している。
【キーワード】立地適正化計画、都市のコンパクト化、都市内農地の保全、隣地買い増し、土地区画整理事業
【Key Word】Location Rationalization Plan, Compacting of City, Conservation of Urban Agricultural Land, Purchase of Adjacent Lot, Land Readjustment Project
株式会社URリンケージ まちづくり計画総括役(兼)都市整備本部 計画部長 三田村 喜己男
立地適正化計画策定について、市町村の担当者は当初から戸惑いを隠せず、必要性を意識はしていても本質的なことを理解しきれていなく、また、策定を支援する都市計画コンサルタント等の方も、残念ながら専門家としての指導力に欠けていたり、公共団体と同じように理解不足の感も否めなかったようである。反面、しっかりとした問題意識の下に取り組んでいる市町村も多くあり、先行的に取り組んでいた富山市では、中心部の地価が上昇するなど、明確な効果が発現されている。本稿では、担当者の生の声から、期待通りの成果がなかなか発現できていない背景と、今後間違いなく訪れる人口減少社会に相応しい都市のカタチや考え方を議論し、実践するための視点を、筆者の主観を交え記述したものである。
【キーワード】建前と本音、戸惑いと悩み、意識不足、経営の視点、小さく成長、不断のアクション
平井 昌子
当研究所は平成29年3月末現在の「市街地価格指数」を5月23日に発表した。「市街地価格指数」から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
※全用途平均:商業地、住宅地、工業地の平均変動率
最高価格地:各調査都市の最高価格地の平均変動率
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
六大都市:東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸
キーワード:市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、下落幅縮小
金 東煥・手島 健治
「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2017~2020年、2025年)・2017春」を4月27日に公表した。まず成約事例を多数収集し、共益費込み賃料のヘドニック分析を行い、その結果を利用してヘドニック型の賃料指数を作成する。次に実質GDP、法人企業の売上高等を使ってオフィス床の需要量及び供給量、賃料指数を求める式を推定し、オフィス賃料変動モデルを構築する。上記モデルで、日本経済研究センターのマクロ経済の予測結果、新規供給量の予測結果等を前提に、2017~2020年及び2025年の賃料及び空室率の動向を予測する。なお前回に引き続き、日本経済研究センターの中期経済予測で標準シナリオと改革シナリオの2通りの予測を行ったことを受け、オフィス賃料予測も2通りの予測結果を公表する。予測結果は、①東京のオフィス賃料等の主な動向は、2018年まで賃料は上昇を維持するが、2018~2020年の大量供給により空室率が上昇し、賃料はやや下落する。2021年以降の賃料は標準シナリオでほぼ横ばい、改革シナリオでは2%前後上昇が継続する。②大阪のオフィス賃料等の主な動向は、2020年まで新規供給が少なく、賃料は2~6%上昇が続き、空室率は2020年に3%半ばまで低下する。2021年以降の賃料は標準シナリオでほぼ横ばい、改革シナリオでは1%前後上昇が継続する。③名古屋のオフィス賃料等の主な動向は、2017年の大量供給による影響は小さく、空室率がわずかに下落し、2020年までの新規供給の少なさによって、空室率が低下し、賃料は上昇する。2021年以降の賃料は標準シナリオでほぼ横ばい、改革シナリオでは2%前後上昇が継続する。
キーワード : 賃料予測、マクロ計量経済モデル、ヘドニック分析
愼 明宏
当研究所は、「第36回不動産投資家調査」の結果を2017年5月23日に発表した。
調査結果(2017年4月)の概要は以下のとおりである。
キーワード : 不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
中島 正人
日本のバブル期の住宅地における地価高騰と下落の経過について、「市街地価格指数」住宅地価格データを用いて論じた。上位住宅地では、まず首都圏で東京都区部の地価上昇が先行し、首都圏近郊、近畿の住宅地に地価上昇が広がった。また、バブル期の住宅地における地価上昇の倍率は、首都圏、近畿の大都市及び近郊で高く、上位住宅地において中位住宅地より高い傾向がみられた。バブル期以降でみると、大都市圏の住宅地は地価上昇が激しかった反動で大きく下落したが、1999年3月に至っても、9割以上の都市が1983年3月の水準を上回り、中位住宅地では30を超える都市の地価がピークの状態にあったことを明らかにした。これらの都市ではバブル期の地価上昇にさらされなかったために、長期にわたる地価上昇トレンドが持続していたと考えられる。そして、バブルを含むとみられる大都市圏商業地等の地価の調整と地方都市住宅地における地価上昇トレンドの終結、そして、地域における需要減等の構造変化が複合し、長期にわたる地価の下落につながったと考えられる。
キーワード:バブル、住宅地、地価上昇、地価下落、1980~1990年代、市街地価格指数
Key Word:Japan’s Bubble,Residential Areas,Land Prices,Rise and Decline,1980-1990,Urban Land Price Index
曹 雲珍・楊 現領・周藤 利一
本研究は、「中国の不動産流通市場の構造と発展過程に関する研究」の一部であり、中国本土における不動産流通の関連データを用いて不動産流通市場、法整備及び不動産仲介業界を含めた全体像とその特徴を把握するための基礎研究である。
中国の不動産流通市場は形成されてから30年ほどしか経っておらず、色々な問題を抱えながらも市場が急激に拡大し、2016年の全国不動産流通率は40%にも達した。しかし、都市間の格差が大きく、北京市と上海市のように比較的成熟している大都市に集中している。市場の発展に比べ法整備は遅れているため、おとり広告や規定外の料金徴収問題などが依然として存在している。これらの問題を根本的に解決するためには統一した法制度を整えることが不可欠である。また、不動産取引の安全性を確保するため、法律上にも仲介業者の開業における資格者の在籍要件について規定し、不動産取引における専門資格者を増やす必要がある。
キーワード:不動産流通業、不動産流通市場、不動産仲介制度、不動産仲介業者