内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室/シェアリングエコノミー促進室 参事官補佐 石原 一樹
超少子高齢化社会に突入し、社会課題の解決に向けて投入可能な政策資源が減少していくなか、多様化・複雑化する課題の解決手段のひとつとして、シェアリングエコノミーは期待されている。政府では、シェアリングエコノミーの健全な発展のため、「シェアリングエコノミー推進プログラム」を公表し、それに基づき様々な取組みを行っている。
【キーワード】シェアリングエコノミー、社会課題の解決、地方創生、経済の活性化
国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター 准教授・主幹研究員 庄司 昌彦
発展を続けているシェアリングエコノミーの進展はさまざまな情報通信技術が支えているが、情報技術を活用した都市として論じられている「スマートシティ」とは、必ずしも外見が「未来的」な都市を作ることではない。国内外のシェアリングシティ等の事例や関連するビジネス・社会動向を「場所のシェア」や「移動のシェア」の観点から考察すると、シェアリングシティとは、仕事も生活も活動に応じて最適な場所を選んで行うことや、これまでの手段や制度などの枠組みを超えて最適な移動手段を使うこと等を通じて人々の生活を豊かに快適にしていくことであるといえる。そしてその実現のためには、都市や地域の多種多様なデータを誰もが自由に利用可能にし、「高濃度」化していくことが求められる。
【キーワード】スマートシティ、シェアリングエコノミー、シェアリングシティ、Activity Based Working、Mobility as a Service
【Key Word】Smart City, Sharing Economy, Sharing City, Activity Based Working, Mobility as a Service
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会
現在、我が国では少子高齢化や首都圏への人口の一極集中等により、急速に空き室が増加している。その一方で、シェアリングエコノミーという概念により空き室を収益化する者が次々に出現しており、彼らは空き室に苦しむ不動産会社とシェアリングエコノミー会社が接点を持つことで、不動産市場にイノベーションを起こすことができると考えている。本文では、賃貸管理の業界団体として、当協会がシェアリングビジネスにどのようにアプローチしているか、賃貸住宅市場の現状を織り交ぜながら論ずる。
【キーワード】IT、シェアリングエコノミー、空室、賃貸管理、民泊
三菱地所株式会社 ビル営業部 戦略営業ユニット ユニットリーダー 専任部長 玉木 慶介
三菱地所株式会社 xTECH営業部 営業・新施設開発ユニット 平井 瑛
近年のビジネスイノベーションスペースはスタートアップ企業に止まらず、イノベーションの創出機会を求める大企業からも注目されている。その結果、これらニーズの受け皿となるサービス付きオフィス事業も変革・発展の時期を迎えており、従来の資金やスペースの効率化に加え、知識や情報のシェアリング等、コミュニティ機能を提供する施設が増加している。これら施設の利用料は一見すると通常のオフィス賃貸料に比して高額であるが、利用者に提供する各種付加価値がこれを正当化している。本稿ではまず、これら付加価値の源泉とその経済合理性について掘り下げていく。また後段では、三菱地所をはじめとするディベロッパーが担う「街づくり」とこれら施設が有する相乗効果について、開発やポートフォリオへの波及効果等の観点から考察していく。
【キーワード】イノベーション、シェアリング、シェアオフィス、エコシステム、コミュニティ
平井 昌子
当研究所は2018年9月末現在の「市街地価格指数」を2018年11月27日に発表した。「市街地価格指数」から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、下落幅縮小
富繁 勝己
当研究所は2018年9月末時点の「全国賃料統計」を11月27日に公表した。オフィス賃料は、全地点の4割強が上昇で、1996年の調査開始以来初めてすべての地方で上昇となり、全国平均は3.4%上昇と上昇幅が拡大した。今回の上昇を2007年のファンドバブル期と比較すると、上昇地点数は上回ったが、5%以上の上昇がファンドバブル期の20地点に対して、今回は8地点と少なく、薄く広い範囲の上昇といえる。共同住宅賃料は、全地点の約8割が横ばいで、全国平均は昨年と同じ0.1%上昇であった。1年後の2019年9月末時点についてオフィス賃料は三大都市圏等で上昇が継続し、全国平均は3.0%上昇と上昇幅がやや縮小、共同住宅賃料は今期と同様に横ばい傾向が継続する見通しである。
【キーワード】全国賃料統計、賃料指数、オフィス、共同住宅、市場動向
金 東煥・富繁 勝己・佐野 洋輔
「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2018〜2020年、2025年)・2018秋」を10月25日に公表した。まず成約事例を多数収集し、共益費込賃料のヘドニック分析を行い、その結果を利用してヘドニック型の賃料指数を作成する。次に実質GDP、法人企業の売上高等を使ってオフィス床の需要量及び供給量、賃料指数を求める式を推定し、オフィス賃料変動モデルを構築する。上記モデルで、日本経済研究センターのマクロ経済の予測結果、新規供給量の予測結果等を前提に、2018〜2020年及び2025年の賃料及び空室率の動向を予測する。予測結果は、①東京のオフィス市場は、2018〜2020年の大量供給の多くが事前に内定される等の強い需要に起因して、空室率が2%〜3%台の低い水準に推移し、賃料は上昇する。2025年まで空室率はわずかに上昇し、賃料は微減する。②大阪のオフィス市場は、新規供給が少ない状況が続き、空室率2%台に低下し、賃料上昇が続く。2025年は空室率が上昇するが賃料は概ね横ばいで推移する。③名古屋のオフィス市場は、新規供給が少ない状況が続くため、空室率が2%台に低下し、賃料は上昇傾向。2025年空室率は上昇、賃料は横ばいで推移する。
【キーワード】賃料予測、マクロ計量経済モデル、ヘドニック分析
愼 明宏
当研究所は、「第39回不動産投資家調査」の結果を2018年11月27日に発表した。
調査結果(2018年10月)の概要は以下のとおりである。
【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
吉野 薫
2018年の我が国の不動産市場を振り返ると、底堅い景気回復に支えられて活況が継続した一方、不動産市場にバブル的な歪みが生じている様相は確認できず、いわば「適温相場」が継続したと総括することができる。2019年においても、マクロ経済の下振れリスクは相応に高まっているとはいえ、景気後退期への突入が差し迫っているとの証跡は認められず、引き続き「適温相場」が継続する公算が高い。
【キーワード】適温相場、企業の設備投資、通商戦争、消費税率の引き上げ
【Key Word】Goldilocks, capital investment, trade war, consumption tax rate hike
外国鑑定理論実務研究会
・2018(平成30)年[第60巻第1号~第60巻第4号]目次一覧