公益財団法人九州経済調査協会事業開発部 研究主査 小栁 真二
近年の九州の景気および投資の動向を分析した。2012年末以降回復した九州経済の牽引役は、輸出と生産に加え、それに応じた製造業の設備投資、さらに非製造業の設備投資である。製造業の設備投資は、生産活動の国内回帰の流れもあり、輸出拠点としての九州の性質を強化している。非製造業においては、県庁所在地において都心再開発や、インバウンド対応のための宿泊施設等への投資が増加しているが、供給過剰となる懸念もある。一方、人材不足という人口構造上の問題に対処するための省人化投資は、景気循環によらず今後も継続していくとみられる。
【キーワード】 九州、景気動向、製造業、都市開発、人材不足
【Key Word】 Kyushu, Economic trend, Manufacture, Urban development, Lack of human resource
九州大学大学院経済学研究院 准教授 與倉 豊
知識経済化が進む現在において、半導体産業や自動車産業の集積で知られる九州においても、イノベーションをどのように創出していくかが重要な課題となっている。本稿では、イノベーションを生み出す人材の集積状況を確認したうえで、地域新生コンソーシアム研究開発事業のように地域を単位とした科学技術振興政策を事例として、共同研究開発ネットワークの空間的な拡がりや域内・域外の相互作用関係を検討し、九州の地域イノベーションの現状を明らかにする。また経済地理学の分野で注目を集めている関連多様性概念について検討を加え、九州の地域イノベーションのポテンシャルを評価し、産業集積の高度化のための課題を考察する。
【キーワード】 経済地理学、進化、産業集積、関連多様性
【Key Word】 economic geography, evolution, industrial agglomeration, related variety
九州産業大学地域共創学部観光学科 准教授 室岡 祐司
観光と地域振興の広がりを読み解くためには、過去から現在における旅行者の動向と観光サービスを提供する企業や受け入れ地域の取り組みの双方からその現象を確認していくことが求められる。よって、本項は、九州観光の歴史を概観した上で、九州においても顕著な増加が見られる訪日外国人旅行者の動向から、九州観光の特徴と現状把握を行う。さらに、九州は「観光を九州の基幹産業」へ育てる目標を立てており、観光の広がりをどのように地域振興につなげていくのか、今後の課題について述べる。
【キーワード】 観光と地域振興、インバウンド、DMO、離島、復興
一般財団法人日本不動産研究所 九州支社長 山﨑 健二
福岡市は日本の地方中核都市の中でもトップランナーとして走ってきた。政策面でもグローバル創業特区を打ち出し、豪華客船の寄港回数も国際会議の数も全国トップレベルを誇る。つれて土地価格の上昇も顕著で博多駅も天神もファンドバブル期の地価水準を凌駕するに至った。英国の雑誌モノクルでも住みやすい都市ベスト25に取り上げられた。ファンドバブル期には米国をはじめシンガポール、オーストラリア等の外資が直接不動産を購入した。福岡市の3点セットと呼ばれるホテルシーホーク、ヤフードーム、ホークスタウンをGICが所有していたのは有名である。ここに来て福岡市は“天神ビッグバン”という大胆な施策を打ち出し戦略的に天神地区の老朽化したビルの建替えに取り組んだ。福岡市がアジアの都市間競争に生き抜いていくには何が必要か。天神ビッグバンの政策に必要な視点は何か。不動産鑑定士の目線から考察する。
【キーワード】 天神ビッグバン、地価公示、直行便、インターナショナルホテル
【Key Word】 Tenjin Big Bang, Land Price Announcement, Direct Flight, International Hotel
平井 昌子
当研究所は2019年3月末現在の「市街地価格指数」を2019年5月27日に発表した。
「市街地価格指数」からみた最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、下落幅縮小
金 東煥・富繁 勝己・佐野 洋輔
「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2019〜2025年)・2019春」を4月25日に公表した。
賃料予測は、東京・大阪・名古屋のビジネス地区におけるオフィス賃貸の成約事例に基づいて、ヘドニック型の賃料指数を作成し、実質GDP等マクロ経済指標を含むオフィス賃料予測モデルの構築で行う。上記モデルに、日本経済研究センターのマクロ経済の予測値、新規供給量の予測値等を前提に、2019〜2025年の賃料及び空室率の動向を予測する。予測結果は、①東京のオフィス市場は、2019〜2020年の大量供給の多くが事前に内定される等の強い需要に起因して、賃料上昇が続く、2021年以降は、調整に入り、以降微増する。②大阪のオフィス市場は、新規供給が少ない状況と強い需要が継続するため、賃料上昇が続く。③名古屋のオフィス市場は、新規供給が少ない中、強い需要が続くため、賃料上昇が続くと予測された。
【キーワード】賃料予測、マクロ計量経済モデル、ヘドニック分析
愼 明宏
当研究所は、「第40回不動産投資家調査」の結果を2019年5月28日に発表した。
調査結果(2019年4月)の概要は以下のとおりである。
【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
吉野 薫・田中 梨奈子
日本企業による進出先として有望視されているフィリピンを対象として、マクロ経済の状況や法制度の概要を整理し、もって同国の不動産事業環境を考察することを目的としている。近年、海外不動産投資へと踏み出す日本企業が増加する中、今後成長が見込まれる東南アジアを進出先として注目する企業が多く、とりわけ公用語が英語であること、人口構成が若いことなどを特徴とするフィリピンは進出先として魅力的な国であるといえる。同時に、外国企業が不動産事業を展開する上での法制度面を整理することが重要であると考えられる。また本稿では、マニラ首都圏の不動産市場動向についても紹介する。
【キーワード】フィリピン、マクロ経済環境、不動産投資、不動産法制、外資規制