東京都 戦略政策情報推進本部 戦略事業部 戦略事業担当
東京都では、東京が世界に冠たる国際金融都市の地位を取り戻すため、『「国際金融都市・東京」構想』を策定し、国や民間等と連携しながら、金融の活性化に向けた取組を推進している。本稿では、「国際金融都市・東京」構想を策定した主旨とその概要を説明した上で、構想の実現に向けた、現在の主要な取組について具体的な内容を紹介する。こうした取組を通じて、東京の「稼ぐ力」を増大させ、2020年以降のサステナブルな東京の更なる成長につなげていく。
【キーワード】 国際金融都市、金融プロモーション組織、東京金融賞、ESG 投資、サステナブルファイナンス
みずほ総合研究所株式会社 調査本部経済調査部 兼 高度デジタル情報解析室 主任エコノミスト 宮嶋 貴之
2020年東京五輪後に日本経済が失速するとの懸念は根強いが、過去の夏季オリンピック開催国の状況を見る限り、五輪大会終了が主因となって景気が後退、もしくは減速する可能性は低い。アテネ五輪のケースでは、五輪開催準備に向けた建設ラッシュとそのピークアウトが五輪後の景気下押し要因となったが、日本の場合、そもそも労働力不足から建設投資が加速していない。むしろ海外情勢による景気下押しリスクの方により留意すべきだ。このような中で、五輪後に求められるのは成長基盤(レガシー)を築くことだ。五輪は世界最大の見本市と捉えて、訪日客、メディア、インターネットを通じて日本独自の地方の魅力を発信し、例えば地方観光など新たな成長市場の開拓に取り組むべきである。
【キーワード】五輪ロス、建設投資、インバウンド、レガシー、地方観光
ジョーンズ ラング ラサール株式会社 リサーチ事業部 ディレクター 大東 雄人
ジョーンズ ラング ラサール株式会社 リサーチ事業部 チーフアナリスト 岩永 直子
本稿ではJLLのグローバルネットワークによる調査結果を基に、前半では現在の東京の不動産市場とその見通しについて、そして後半では世界主要都市との比較について最新の調査結果を用いて考察したい。東京は2020年にオリンピックを迎えることで都心部では再開発が集中しオフィス供給は過去20年で最大の規模が計画されている。また新たな需要としてコワーキング市場が拡大しており働き方にも大きな変化をもたらしている。一方、投資市場では潜在的な市場規模を有しており、取引額にはさらなる拡大の余地が伺える。さらに、世界で激化するイノベーションハブの人材獲得競争において、東京の優位性と課題がいくつか見えており、他の主要都市との比較を用いて展開したい。
【キーワード】 コワーキング、投資市場、不動産透明度、世界のイノベーション都市、都市比較、賃貸市場
一般財団法人日本不動産研究所 本社事業部 副部長 兼 東京五輪関連事業推進室長 阿部 進悦
2020年のオリンピックを迎え、都心ではこの数年、100年に一度とも言われる再開発ラッシュにより大型ビルの供給が続いている。このような大量のビル供給が行われることになった経済的、政治的、行政的な背景と現政権の経済成長戦略の一つである「国家戦略特区の都市再生プロジェクト」を通して、今後計画されている都市開発とインフラ整備、過去のオリンピック開催国の取り組みからオリンピック後の東京の未来図を紹介する。
【キーワード】 アベノミクス、再開発、国家戦略特区、インフラ整備
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 助教 工藤 尚悟
日本は若齢増加型社会から高齢縮小型社会へと転換を迎えており、社会の発展や豊かさがどのような意味を持つのかが問われている。本稿は、ポスト2020年以降にも続く縮小高齢社会においてどのような社会のあり方を構想していくのかについて、地方と都市の関係性という切り口からの一考察を示す。一極集中が進む東京圏においては、これまでの規模に依拠した経済や社会の仕組みを維持できるが、人口減少が加速する地方圏では地域固有の質に根ざした自立分散的な社会のあり方を模索していく必要がある。地方が都市のなかに自らの空間を創り出し、都市を介してローカルとローカルがつながって知見交流が起きることで、自律分散型社会が立ち現れてくる。この過程を通じて地方発信の新しい価値観が都市に流れ込むことで、都市の多様性と寛容性が高まっていく。
【キーワード】 縮小高齢社会、ポスト2020、自律分散型社会、一極集中、地方と都市
【Key Word】 Aging and shrinking society, post 2020, decentralized autonomous society, overconcentration, rural-urban linkages
平井 昌子
当研究所は2019年9月末現在の「市街地価格指数」を2019年11月25日に公表した。
「市街地価格指数」からみた最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
※全用途平均:商業地、住宅地、工業地の平均変動率
最高価格地:各調査都市の最高価格地の平均変動率
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
六大都市:東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸
【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇
富繁 勝己
当研究所は2019年9月末時点の「全国賃料統計」を2019年11月25日に公表した。オフィス賃料は、調査地点の約半数が上昇で、全国平均は4.0%上昇と上昇幅が拡大した。今回の上昇を2007年のファンドバブル期と比較すると、上昇地点数は上回ったが、5%以上の上昇がファンドバブル期の20地点に対して、今回は13地点と少なく、薄く広い範囲の上昇といえる。共同住宅賃料は、全地点の約8割が横ばいで、全国平均は昨年と同じ0.1%上昇であった。1年後の2020年9月末時点についてオフィス賃料は三大都市圏等で上昇が継続し、全国平均は3.0%上昇と上昇幅がやや縮小、共同住宅賃料は今期と同様に横ばい傾向が継続する見通しである。
【キーワード】全国賃料統計、賃料指数、オフィス、共同住宅、市場動向
金 東煥・富繁 勝己・佐野 洋輔
「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2019 〜2025年)・2019秋」を2019年10月24日に公表した。賃料予測は、東京・大阪・名古屋のビジネス地区におけるオフィス賃貸の成約事例に基づいて、ヘドニック型の賃料指数を作成し、実質GDP等マクロ経済指標を含むオフィス賃料予測モデルを構築して、2019 〜2025年の賃料及び空室率の動向を予測した。予測結果は、(1)東京のオフィス賃料は、2019 〜2020年の新規大量供給の多くが事前に内定される等の強い需要の影響で、賃料上昇が続く、2021年からは横ばい後、2023年から調整に入り、以降やや下落。(2)大阪のオフィス市場は、新規供給が少なく、需給逼迫が続き、賃料上昇が続く。(3)名古屋のオフィス市場は、新規供給が少なく、需給逼迫が続き、賃料上昇が続くと予測された。
【キーワード】賃料予測、マクロ計量経済モデル、ヘドニック分析
愼 明宏
当研究所は、「第41回不動産投資家調査」の結果を2019年11月25日に発表した。
調査結果(2019年10月)の概要は以下のとおりである。
【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
吉野 薫
2019年を振り返ると、景気の足踏み感が顕著であったものの、不動産市場において特段の変調はみられなかった。内需が底堅さをみせるもとで不動産市況は安定的に推移し、特に地方圏におけるオフィス市場の引き締まりが印象的であった。ここ数年来の「適温相場」が継続したと総括することができる。2020年を見通してみると、市況の過熱化などには十分な留意が必要であるが、これまでのところ不動産市場における変調の兆候は観察されず、引き続き「適温相場」が継続する公算が高い。
【キーワード】適温相場、企業の設備投資、消費税率の引き上げ
【Key Word】Goldilocks, capital investment, consumption tax rate hike
外国鑑定理論実務研究会
・2019(平成31/令和元)年[第61巻第1号~第61巻第4号]目次一覧