株式会社コラビット 執行役員 谷口 卓哉
金融緩和の下で東京23区におけるマンションの価格は上昇を続けている。この流れは今後も続くのか、それとも下落に向かうのか。データから見る「今」を考察した。 現状、中古マンション相場について下落の要因は見つかりづらい。しかし一方で上昇の予測も難しい。中古マンション価格と賃料との関係から見るとすでに価格上昇は危険水域に達していると言える。 また価格上昇トレンドの中において、価格の上昇率に格差が出ている。どのような特性のマンションの上昇率が高いか、どのようなエリアの相場上昇率が高いかを分析することで、現状の上昇率の格差を示した。 そして今後のマンションのトレンドを見極めるために必要なデータについて検討する。
【キーワード】不動産テック、AI、データ活用、マンション価格推定
【Key Word】Prop Tech, AI, Date, Apartment
一般財団法人日本不動産研究所 マンション市場動向研究会
本稿では1990年から2021年の東京都23区における新築マンション販売価格データを用いてヘドニック分析を行い、品質調整済みのマンション坪単価の推移を把握、またマンション価格に係る価格形成要因の影響度について時系列分析を行った。その結果、駅距離や地域性といった品質を一定に補正したマンション坪単価は実際の平均坪単価よりも1~2割程度低位であり、さらに近年は、マンション販売価格へ与える特定の要因について、その影響度が強まっていることがわかった。いわゆる「マンション価格の二極化」が確認され、さらにその二極化は進展する可能性が高いことが判明した。
【キーワード】ヘドニック、ローリングウィンドウ、要因影響度、時系列変化、マンション価格二極化
【Key Word】Hedonic analysis、Rolling Window based regression、Factor influence degree、Time series change、Polarization in apartment price
一般財団法人日本不動産研究所 主任研究員 曹 雲珍
2023年8月29日に公表した6月時点の「不動研住宅価格指数」によると、首都圏は115.39ポイントで、今年1月から115ポイント台を維持している。地域別では、東京都は129.02ポイント、神奈川県は102.68ポイント、千葉県は89.97ポイント、埼玉県では91.97ポイントとなった。
東日本レインズの首都圏中古マンションの成約件数を見ると、2023年上半期の成約戸数は18,065戸で、前年同期よりやや低下したものの、依然として高い水準であった。2013年から中古マンション価格は概ね上昇傾向が続いており、2020年前半は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、やや下落したが、後半から上昇傾向が続いている。このように中古マンション市場が好調なのは超低金利を背景に中古マンションへの需要が堅調なためと考える。
【キーワード】住宅価格指数、リピート・セールス法、中古マンション、市場動向
近藤 共子
列島改造期の土地取引に関するデータは限られるが、東北地方(前号)に続き、本号では中国地方を例に、観光開発等を標榜した買占めと同時に、市町村を越えて拡大する通勤圏における住宅団地建設、地方圏への工場立地の進展、インフラ整備の進展に伴う公共用地等の土地需要も大きかったことなどをみた。また、列島改造期前後には、住宅開発に伴う土地取得は大都市圏やその郊外に留まらず地方圏においても、また、仙台、広島以外の県庁所在都市やその他都市周辺に広く拡大したが、これらに関するデータもまた限られ、列島改造期の土地取引の全体像はデータで把握されていない。
【キーワード】列島改造期、土地投機、山林原野、東北地方、中国地方
【Key Word】land property boom, urbanisation, the remodeling of the Japanese archipelago
総務部兼企画部 主幹・弁護士 安部 康広
海外不動産市場研究会
研究部 次長 岩指 良和