麦島健志
不動産や企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、限られた資源である企業不動産について、「企業価値向上」の観点から見直しを行い、経営に最大限活用していこうという考え方が「CRE戦略」である。
CRE戦略の推進は、企業にとっての効果とともに、土地の有効利用の促進、地域経済の活性化、地価の安定などの社会的効果にもつながるものであり、積極的にこの動きを進めていく必要がある。
ここでは、CRE戦略の考え方をご紹介するとともに、国土交通省におけるCRE戦略推進のための「ガイドライン」と「手引き」作成の取組みについて、その概要をご報告する。
清水千弘
企業は、生産要素市場から土地・労働力・資本を投入し、財やサービスを生産している。企業不動産戦略(CRE戦略)の出発点は、企業が利潤を最大化する土地・労働力・資本の最適配分を実現することである。そこで、まず議論を精緻化するために、都市経済学の枠組みを用いて不動産の選択基準を設定した。さらに、企業は永続的に存在し、不動産は耐久性を持つことから、最適な選択基準は時間とともに変化していく。このような時間的な変化に対応するためには、企業と不動産のそれぞれのライフサイクルを踏まえて、両者に乖離が発生した時の課題に対応しなければならない。加えて、不動産は外部性を有することから、単なる経済的選択基準だけでは不十分である。そこで、不動産が持つ、ⅰ)事業への外部性、ⅱ)空間への外部性、ⅲ)社会への外部性、を吸収していくことの重要性を示すとともに、最後に、CRE戦略を進めていく上での経済学的課題を整理した。
清水久員
企業の不動産(CRE)に影響を及ぼす要因として、国際会計基準、J―SOX法(内部統制)の導入が注目されるが、これらの要因とCRE戦略との関連性について考察を行う。次に、中小企業とCRE戦略との関係においては、特に事業承継の観点からCRE戦略の活用可能性を検討する。更に、CRE戦略とリスクマネジメント、CRE戦略を実施する上で必要となるファイナンスに関する留意点にも触れ、CRE戦略の定量化の可能性、不確実性への対応を検討する。最後にCRE戦略と企業戦略との関連性を考察するとともに、CRE戦略が企業戦略の重要な要素として、競争優位を生む戦略として位置づけられる必要性に言及する。
鈴木晴紀
(社)日本ファシリティマネジメント推進協会(以下、JFMAと記す)では、1987年の設立当初から、施設資産(PRE: Public Real Estate / CRE: Corporate Real Estate)戦略をファシリティマネジメント(以下、FMと記す)の重要な分野と捉えて、その普及・定着のための活動を展開してきた。
一方、昨今では、公共施設関連では、国有財産法が改正され行政改革推進法が制定され、民間施設関連では、金融商品取引法(日本版SOX法)(「資産の保全」が目的の一つ)に基づく内部統制報告書の提出が義務付けられる等、ファシリティ(土地と建物及び環境)を資産と捉えたマネジメントの実践が強く求められている。
本稿は、企業及び団体における施設資産戦略の事例と手法を紹介すると共に、現状の課題を整理した上で、今後を展望するものである。
齊木正人
CRE戦略にかかる不動産評価においては、企業経営の観点から不動産を評価するという視点が必要であり、不動産戦略が経営戦略に近づくものになるほど、ますます重要になっていく。
本稿においては、CRE戦略における不動産評価方法を紹介するとともに、今後のCRE戦略の普及にあたってさらに検討すべき課題に触れる。
安達俊雄
関智文
八木正房
平成18年の住宅着工戸数が前年に引き続き120万戸台に回復したことや合板需給構造に変化が生じたことから、木材市場価格が回復し平成19年3月末現在の杉立木価格は17年振りに増加に転じた。
一方、木材(丸太)の国内需給をみると、平成12年以降徐々に国産材シェアを高めており、平成18年においては自給率59%に達し、昭和40年~45年の水準に回復している。本稿では、国内の木材事情に及ぼす海外の木材供給及び需要の変化の事情を分析するとともに、日本不動産研究所が「山林素地及び山元立木価格調」として2007年9月19日発表した内容に加えてその後加工分析した内容を併せ紹介する。
荘 孟翰(作)
林 英彦(訳)
日本不動産研究所 海外不動産評価チーム
外国鑑定理論実務研究会
平成20年1月1日より、「借地借家法の一部を改正する法律」が施行され、10年以上50年未満の期間で事業用定期借地権を設定することが可能となった。存続期間の上限を現在の「20年以下」から「50年未満」に引き上げられることにより、税法上の償却期間とのミスマッチの解消、よ[り所有者・ユーザー双方のニーズに応じた期間の設定が可能になり土地の有効活用に資するとともに、長期的視野に立つ行政の支援を受けたまちづくりが可能になることから、持続的な地域活性化に寄与することが期待されている。