泉 宏佳
昭和40年代に建設された大規模住宅団地が40年を迎え始めている。標準設計により大量に建設された住宅団地は、住宅余りの中でどのような再生が可能だろうか。
居住者の高齢化を踏まえ、ヨーロッパの団地再生が都市再生とリンクして進められているように、地域との広がりの中で総合的に進められるべきだ。
青木 竜一
UR都市機構の賃貸住宅ストックのうち、昭和40~50年代前半に供給されたもの(メインストック)については、全体の約6割を占め、これらの再生・活用方策が課題となっており、従来、住戸内(リニューアル等)、住棟共用部の改善、屋外環境整備をはじめ、様々な団地再生の取組みを実施してきた。今後、本格的な人口・世帯減少社会を迎えるに当たって、従来以上の地域のまちづくりとの連携、個別団地毎の整備課題に応じたストック構成の再編が必要と考えられ、特に大規模団地においては、各事業の複合的・選択的実施を図ることが効果的である。また、これらメインストックの世帯主年齢を見ると、65歳以上が3割を超える状況であり、ストック改善を通じたCS向上を図るためには、ハードだけでなくソフトとの連携が効果的である。
鈴木 雅之
団地は住宅という単一用途でのみ構成され、本来「まち」がもっている多様な用途や機能に欠けていながらも、当時の土地利用制限がそのまま継続している経緯から、まちへ改善する機会を失っている。また住棟も老朽化し、住棟はエレベータがない5階建てである。このような団地の中で、今後も住み続けていく住民にとって、安心・安全で、魅力がある住まいと暮らしが求められる。そこで、大学発NPOと団地住民が、協働で、住みやすく、安心して暮らせる団地再生の実践のために立ち上がった。その活動の中から、特に住まいのリフォームや高齢者の買物サポートなどのコミュニティビジネスを中心に紹介する。そして、団地生活をソフトとしてサポートする仕組みは、住民活動、行政、民間企業などのコミュニティ・ガバナンスの運営の中にあるとした。
戸村 達彦・小杉 学
500~1,000戸で敷地を共有する郊外分譲集合住宅団地では、団地再生の目標像や進め方について、管理組合が中心となって数多くの区分所有者の意向を調整しつつ、意志決定や合意形成を行う必要がある。分譲団地におけるまちづくりの中心は行政でも専門家でもなく、一般の住民とならざるをえないのである。住民主体の団地再生では、その主役となる管理組合や住民の活動をいかに支援し育むかが大きな課題である。未だ有効な解答は見つかっていないが、これまでの7年間、大学研究室が手探りで取り組んできた支援活動を紹介し、そこから何が見えつつあるのか、何が問題の根にあるのか、そして何より、大学研究室がまちづくりの実践に介入する意義はどこにあるのかを読み解いていく。
齊木正人
八木 正房
経済のグローバル化が進展するなかで、我が国の農林水産物需給は、中国経済成長の影響を受け変化している。特に木材にあっては、中国の需要が拡大したことの影響もあって、これまで、丸太の供給国であったマレーシア・米国・カナダからの輸入が減少し、これに替わって欧州・ロシア・中国からの製材輸入が増加してきた。木材需給構造が変化してきた背景には、中国の経済成長に伴う需要の増加があるが、中国政府の林業政策も大きく関係している。
日本の林業界では、中国の木材需要が外材に依存する状況を踏まえて、日本国内で暴落している杉の需要回復を期待する暑い眼差しを中国に向けており、国レベルでも中国市場の把握に乗り出してきた。
このような状況の中で、日本不動産研究所は「山林素地及び山元立木価格調」を実施し、2006年9月14日発表した。本稿では、木材需給の変化に伴い先進企業において国産材、とりわけ杉材の需要開発への取り組みが活発化してきたことを踏まえ、今回発表した結果に加えその後加工分析した内容を併せ紹介する。
手島 健治
オフィス市場動向研究会(三鬼商事㈱と日本不動産研究所の共同研究会)では、今後のオフィス市況の大局的な動きを把握することを目的として、計量的アプローチにより将来のオフィス市況の動向を推計し、公表している。本稿では、この成果である東京ビジネス地区(都心5区)における大型ビルのオフィス賃料等の予測結果をまとめている。主な結果は、(1)2007年に新規供給量が急増するが、既存ビルの建て替え等の動きが多いと見込まれること等から、空室率は引き続き2%強まで低下し、賃料は年率5~8%上昇する。(2)2009年以降は景気の後退等が予想されるため、それらの影響により空室率は反転して4%近くまで上昇し、賃料は年率4%程度の上昇から横ばいとなる。(3)2012年以降は空室率が4%前後で安定的に推移し、賃料もほぼ横ばいとなる。
外国鑑定理論実務研究会
第165回国会において、大正11年(1922年)に制定された信託法が80余年を経て改正された。この法律は、一部の経過措置を除き、公布の日から1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。改正の趣旨は、最近の社会経済の発展に的確に対応した信託法制を整備する観点から、(1)信託制度について、受託者の義務、受益者の権利等に関する規定を整備すること、(2)信託制度について、多用な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入すること、(3)現代用語化することである。
この法改正によって、様々な類型の信託ができることになるが、信託の本質として、(1)信託行為により受託者に財産を帰属させること、(2)受託者は信託目的にしたがって、受益者のために管理・処分すべき拘束を受けることにおいては何ら変わるところがない。
抜本的な改正であり、主たる改正点としても、新たな信託類型である受益証券発行信託、限定責任信託、目的信託、自己信託を創設したこと、受託者に求められる義務について、善管注意義務、忠実義務の軽減又は加重を定めたこと、信託事務処理について第三者への委託を認めたこと等、多岐に亘っている。本稿では主として新たに創設される信託の類型である「受益証券発行信託」(185条~215条)を中心に紹介することとする。