まちを使うことでまちづくりに参加しよう

Vol2.
京都祇園、独特の風情を
維持・継承し地場産業活性化

Vol2. 京都祇園、独特の風情を維持・継承し地場産業活性化

東京藝術大学美術学部建築科 講師 河村 茂 氏 博士(工学)

12.19 UPDATE

まちを使うことでまちづくりに参加しよう -地場産業活性化-

 ハードとしての景観整備が進むと人びとの関心も高まり、まちの使い方についてもルールをつくろうではないかということになった。そこでできたのが暮らしの憲法とでもいうべき「町式目」である。、全部で6章24項目で構成されており、2004年に協議会で採択された。主な内容としては、伝統文化の継承・発展に努めること、地区のルールを守ること、来訪者に温かく親切に接すること、火の用心と防犯に留意すること、不動産の権利移譲は予め協議会に報告すること、等々である。

 このようにこのまちでは、この地独特の風情を界隈性を維持・継承しようと、祇園の町の人々も市役所の職員も一所懸命である。それは両者ともこの場所のもつ価値を十二分に知っているからである。そして現在を生きる人々に、このまちの魅力を味わってもらうとともに、伝統的建造物群が醸すこのまち独特の風情を次代の人たちにバトにタッチしようと努力しているのである。この場所のもつ固有な価値は、地主と借地人など町方の人々が力を合わせて創り上げてきた独特のシステムをベースに成り立っている。それを行政もバックアップしさらに充実強化することで、界隈性の維持・継承に努めている。

 この祇園のまち独特の風情は、屋内でのおもてなしサービスとあわせ、日本文化を代表するもののひとつとなっている。その価値は、実は日本人以上に外国の人の方が知っている。米軍が太平洋戦争のとき、このまちを爆撃対象にしなかったのは、この地が長年かけ生活文化を紡ぐようにして創りあげてきた、このまちの界隈性を人類全体の財産と捉えたからである。だからこそいま世界遺産となっている。この地は外国の人たちから見ても、そんな価値のあるまちなのである。そのことを私たち日本人はもっと自覚し、ハード(茶屋建築の町並み)とソフト(舞子や芸妓、仲居さんなどによる、おもてなしのサービス)とが絡み合って醸す、この地固有な風情ある祇園文化を、さらにブラッシュアップする形で、次の時代へとつないでいくことが求められる。

 そのためにも私たちは、このまちづくりにユーザーとして参加し、まち歩きをしたり飲食やおもてなしサービスを受け、この地の生活文化を楽しむことが肝要である。このことがこのまちの地場産業の活性化につながり、結果、まちの継承にも寄与していくことになる。このようなまちづくりへの参加の仕方もあることを、私たちは忘れてはならない。価値ある魅力的なまちを維持・継承していくには、ただ遠くから眺めているだけではだめで、多くの人が積極的にまちを使い込んでいくことが求められる。

参考文献等

  • 京都市(1999):「祇園町南歴史的景観保全修景地区歴史的景観保全修景計画」
  • ハウジング&コミュニティ財団(2003):「住まい・まちづくり活動、事例4:京都市祇園町南側地区」
  • 特定非営利活動法人・祇園町南側地区まちづくり協議会(2004):「京都市祇園町南側地区における、いえ・まち防災啓発活動を通した密集市街地の整備改善に向けた調査報告書」
  • 地域生活空間研究所 上林研二(2007):「祇園町南側地区のまちづくり」 学芸出版社
  • 平竹耕三(2005):「まちづくりと土地利用」龍谷大学経済学論集Vol. 45 No. 2
  • 京都市景観・まちづくりセンター(2007):「祇園のまち歩き」京まち工房№40
  • 松田有紀子(2010):「「花街らしさ」の基盤としての土地所有」立命館大学大学院先端総合学術研究科紀要Core Ethics Vol. 6
  • 吉田 秀雄(2011): 「事例報告、京都祇園地区の南地区再生」
  • 佐々木一成(2011):「地域ブランドと魅力あるまちづくり」学芸出版社